危機感

なるほどーと思いました.

個人的に,理科大にやってきてからずっと何が違うか違和感を抱えていました.

他の大学にもそれぞれ特性があり手こずったところがありました.他大学では本質的な大問題もあり,理科大での課題は些細なものではないかと感じてはいましたが.

そうなのですよね,そこまで突き抜けた問題を理科大では感じていないのは確かです.その点では安定した人材輩出の場と言えます.

ただ…

何が違うかというとタイトル通りなのですね…危機感に乏しいです.これはこれで「良い特徴」にもなりえるので,否定的な意味合いだけではない.

危機感に振り回されて精神的に不安定になる人は多いです.そのため継続的な仕事に従事するという意味合いでは精神的に安定していることが望ましく,さらには外部からの騒音に振り回されることは好ましくない.

しかし一方で,際どい戦いをしている研究業界では,常に精神的には不安定な側面が強い.

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これまで40人くらいの研究室関係者を見ていて思うのは,他大学院に進学した学生の一部からは伝わってきていた危機感があまりないということです.

経済的に他大学院を選んだケースでは,必ずしも武者修行を志しているとは言い難いものの…旧帝大系の大学院への進学を経済的に安易に決めると危険です.

学生の気質は年度によって変化するので「危機感に乏しい学生が多い」という割合の問題です.

ただ圧力を少しかけるくらいでは,多くの学生はマイペースですね…そうとう圧力かけろと?…アカハラレベルと判定されなければ問題ないのかもしれませんが.

理科大にやってくる前までは,成績の良し悪しに関係せずに学生は何らかの危機感を抱えており,それによりグイグイと学生側から押してくる雰囲気があったことを憶えています.

単に,研究や進路などの話だけではありません.

現状で懸念しているのは「暖簾に腕押し」に近いと感じる学生が増えている?ということかと.理科大に限った話ではないのでしょうか.

当然のように卒業して,当然のように修士をとり,当然のように就職する…無意識に植え付けられている被用者感覚もあるかとは思います.

目標のために先人を足場にしていこうという覇気があまりないケースは多い.先人を利用して自分の能力を上げていきたいという発想.または先人を吹っ飛ばして自分が先に進む勢い.

学生の時点で明らかに優れた研究者の芽が出ている人でさえ危機感を持って,どのように克服すべきか常に悩んでいる.彼らと勝負にならないというのは社会に出ると非常に痛い.

現実として,悩みなき研究者は不要ですからね.

危機感をもって,どのように現状の自分を打破するか常に悩む,迷う.たとえば人間社会は現状維持を望むと破綻すると言われている.研究者は,その代表格ではないでしょうか.

もっと煽らないと駄目ですね…匙加減は難しい非常に.

東大の話を聞いても大変そうなので,理科大に限った話ではないのだろうとは…確か8年前くらいの時点で,とある東大教授から聞いた話では「自分の利益のための権利の主張はするが自分では何もできない学生が非常に増えた」ということでした.

ある意味で「よく知っている」という子どもが増えたんでしょうね…遠藤が20歳やそこらのときは未熟で自分の権利やらに思い当たることもなく,その権利が脅かされるかもしれないから危機感が強かったのか?

現代はコンプライアンスの問題もあり保護されていることが明確になっている.小学生でもなんとなく知っているし,中学から高校では強く意識するようになるはず.大学にもなれば,それを自ら活用し始める頃合い.

それは良いことではあるものの,土足で踏み込んでくる他人が減ったことで自分の領域が守られ安心感につながってしまった…とも?

他者との戦いでは,どうしても相手の領域に土足で踏み込む場面が増えます.それは同時に,相手も自分の領域に入っていることを意味する.戦いを挑むことで自分の領域が浸食されるから,戦わない.もし,そういう感覚が身に付いているとなると,そうとう厄介です.

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そろそろ一回り世代が入れ替わる.

権利で奪うのではなく他者の利益のためにも自分で生み出す,そういう意識を持って欲しいですよね…研究という特殊業界に近づける人は自分だけが良ければOKとはいかないのではないでしょうか.