持続可能性

これが重要でフラフラ移動するとあまり良いことは起きないと個人的には思っている…けど学生はあまり重視しないかもしれないなぁ.

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ある程度の位置にある大学間で差があるとすると、大学卒業後は学力とは言い難い(はずなんですけどね).理科大理学部第一部化学科あたりになってくると,学力も基礎も高いほうにある.最悪,教科書の内容なら書いてある場所だけ覚えておいて細かいところは後で読めば良い.差が生じるなら「危機感」か「決断」、つまり「意思決定」しかない気はします.

ごく一部にいる特殊層は「いつ始めてもモノになる」のですが,彼らもどの大学に在籍しているかは関係ないどころか大学進学していないケースもある.99%以上の一般人と比較できませんので彼らは無視しておくとして,ほとんどの人が「早期に始めるほど他人より力がつく」ということです.特に目立たない凡人でも時間さえ投じれば大学の専任教員になれるわけです.遠藤のように.遠藤の取り柄は「周囲が見えなくなるくらいに集中する」ことですので…集中できないと駄目だったりしますけどね.今はあまり集中できていない.

どれくらい先走れば良いのか,これは他の専門領域と同じことです.そういえば何度も書いていますが10年後に同世代の中でフロントランナーになることを目指して走り出す.一般人にはこれが肝要です.

「1万時間の法則」とも呼ばれるものがありますが,これだと1日10時間で3年程度とみなせるとして…ただ「1万時間の法則」は関係なく短時間でも問題ないという意見もありますね.

実際どうなのかということですが程度の問題だと思います.一般人が研究のプロを目指す場合はどうしても博士課程を得るあたりまで最低でも時間がかかりそうです.5〜6年といったところ.これは本人の素養の問題というよりも,単純に段階的に身につけるべきことがあるので一足飛びに成し遂げることが難しいためかと思います.

結局「自分は活躍する研究者を目指す」と決意を固めて本気で行動に移し始めるまでの時間が短いほど,その可能性は高くなるというのは自然の流れ.

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問題は「自分の意図が反映されないケース」です.

学費がない(奨学金に頼る),学業に集中できない(ある意味でコロナウィルス感染拡大も),任期がある,公募がない,研究費がない,など順調に理想通りに進むわけではない.よって何を優先するかを早々に考え始めねばならず「二択」になることがあります.

学費生活費問題は,よく取りざたされています.遠藤は合計で700〜800万円くらい返還必要な奨学金を借りました.当初は当然,返還するつもりで借りています.けっこういましたよ東大にも借金まみれの学生が…1000万円を超えている学生いましたから.よく「東大生の親は裕福」とされていますが「親が裕福でも大学院からは奨学金」というケースは当然ある.大学院生は成人なので,親も「そこまで勉強したいなら自己責任と覚悟を持て」と,親が費用負担しなくなってくることがある.

よって自分がやりたいことを貫くなら覚悟を見せないと誰も信じてくれないということです.自分の意図が反映されなかろうがきつかろうが突破する姿勢は必須です.

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とはいえ可能なら持続可能な環境が良いです,遠藤の経験上.金沢大学への異動について書きましたが,微妙なところで断絶が起きてしまっていたのが実際です.同じ場所で継続できることが望ましく,それを重要と考えていない人がわりと多いのです.

本当にどうしようもないケースで,遠藤のように「任期がない」「公募がない」「縛りがある」とき二択でbetterを選んでいくことになります.

つまり可能なら「集中できる環境から移動しない」というメリットを考えたほうが良いのですよね.これは35歳までの話ですが…

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35歳を越えてくると節目を迎えてしまいます.これは民間企業への就職でも同じような感覚ではないでしょうか.キャリアアップの流れは35歳くらいで見えてきてしまう.ライフイベントなども考慮すると40歳を越えてから移動することはあまり好ましくないでしょう.近場なら良いとは思いますが,専任教員に着任するためには大学を選んでいられないことがある.

以上のように考えてみると,驚くほど時間がないことに気づくかとは思います.27歳で博士,3年以内に成果を出して次に進めと言われることになりますが,その場に立つと「そんなの現実的ではない」とか感じます.3年以内に成果を出して,そこから関連研究で結果につなげると,だいたい8年くらい.これで35歳です.この期間に移動はしないほうが良いと実感しましたが遠藤は無理でした.

かなり成果を上げられている助教の先生が40歳を越えても移動しないケース,たくさんあります.良し悪しあります.35歳くらいまでは継続する環境を整え,そこでなんとか強引にでも次の段階に進むほうが良いかなぁと個人的には思います.

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学生視点で考えると以下のようになる…依存性を断ち切ったほうが良いです.これは経験上でも言えること.

「誰かに何かしてもらって自分の能力を高めよう」という腹づもりだと,どうしても「誰か」に依存するしかない.その「誰か」が自分の近くにいれば良いのですが,いなければ自分が「誰か」のところに移動する.自分が移動することで環境が変わる.その「誰か」が意外と自分を高めてくれない,次に行こう…これは無駄です.

修士で他大に進学する学生,少なくとも修士卒で民間企業就職するなら無意味かもしれません.博士卒まで進めば5年の蓄積.修士で他大進学するなら博士まで行けと勧めてきましたが,結局,博士になった学生ほとんど知らない…

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学生の他大進学という観点ではもったいないんですよね.どうせなら博士まで行ったほうが力になる.ただ腰掛け程度に考えている学生が実際には多く,博士までの力がないかもしれない.

研究者という観点では,たとえば偏差値の高い大学から偏差値の低い大学へと移動することを躊躇すると「老化」しますからね…独立できない以上,35歳を越えたら早々に移動したほうがチャンスは広がるかと.

いつまでも時間があるわけではありません.期限を決めた上で,可能な限り持続性のある環境を探すことを学生には推奨したいですね.