成功者に育てる?


理科大生も,卒業後は,数多くの競合者と付き合うことになります.
そのため,以下,よく認識しておいたほうが良い.
良い,悪い,という価値基準で見るというより,何を最終目標とするかで要求される度合いが異なる,というものでもある.

教えてもらった範囲で成功はありえない,ということです.

しっかり育てるべき,という声はあるかと思いますが,これは「育てる」という問題ではないのが厄介.
育てないと育たないようでは,卒業後に厳しい展開が予想されるのです.

理科大生は,基礎的な素養が優れており,これまでに在席した,どの大学よりも,研究室配属時の「基礎」が,かなり高いところにいます.
着任から3年経過して,そんな彼らと,そんなに濃密ではないにしても,付き合ってきて,出てきた印象を書いていきます.

「基礎」とは何かというと,たとえばですが…
・実験ノートの書き方
・実験データのまとめ方
・文章作成能力
・知識

こういったあたりは,おそらく「実力主義」と標榜する理科大にて,かなり教え込まれた結果であると思います.
企業,つまり雇用者側にとっては「使える人材」となりやすい.評価も高いようです.

早稲田大学では,高校から推薦で進学してきた学生が,かなり多いのですが,問題点もある.
それは,推薦などでの進学者と,一般受験生の間に,極度の学力の差があるということです.
当たり前?とも思うかもしれませんが.かなりの差で驚いたほどです.
それも,卒業する頃には,ほどよく平均化されていくので,たいした問題にはならない傾向にあるようです.

ということで,理科大生は,基本的には一般受験が多い(ただ,推薦も増えてきているような…)ということと,進級ハードルが高めで,なおかつ卒業研究に着手可能な人数に制限がかかっているためか,それなりの素養を持つ学生が研究室配属となります.

一方で,理科大生が苦手としていることも,おおよそ予想はしていましたが,徐々に明らかになってきています.

理科大生は,平均的に見ると「育成されること」に慣れており,勝手に成り上がる気質に乏しい,かもしれない.
要するに「成功者になれるよう育てて欲しい」という感覚なのか?と感じることが多いのです.

「教えてもらえないと育たない」これに近い傾向にある.
あくまでも平均的な話です.

仮想の競合者の代表は,やはり,東大,東工大などの出身者です.

東大,東工大などで見た学生の多くに,この「育成して欲しい」という感覚が,ほぼなかった気がします.
良くも悪くも「自分勝手」ともとれるし「意識が強すぎて扱いにくい」とも言える.
だから,良いことばかりではないのですが…特に「雇用される側」としては.

彼らにも,長短ありますが,ひとえに「自発的にやってしまう」という特性がある.教えてもらわなくても自分でやってしまい,失敗すれば自分自身で是正,方針転換していく.
最初から,すべて成功するわけではありません…自分自身を省みてもわかります.

効率が悪い?…どうでしょうか.
教えてもらってから成功率を高めた上で実践したほうが,ミスも減るだろう,という考え方.

これがむしろ「成功したい(?)」という願いの成就を妨げる気はします.
寄り道が,まったくないからです.

遠藤自身,育成して欲しいと思ったことは特にない(そう見えていた可能性もあるとしても)のですが,これは直属のボスに聞いてもらえればわかりますが「暴走する傾向にある」という学生でした.
どういうことかというと,人知れず挑戦して,人知れず失敗していることがある.指導する側は,そこまで放っとかない方が良いのではと思う次第ですが…

「わからない」けど「教えてもらっていないので,うまくできない」から「困ったので先に進めない」という展開はない.
「わからない」から「試しに自分でやって」みて「うまくいく」か「うまくいかない」という繰り返しです.繰り返すので,いずれ「うまくいく」ことが多い.
この最中に,寄り道が,かなり発生する.

手を伸ばせば届きそうだと判断すれば,遠藤の場合は,誰にも何も一切聞かずに行動してしまいます.
少なくとも,これで成功率の高い学生が,周囲には,わりと多くいました.
遠藤は,成功率が高いわけでもなく,結果的に「数打って当てる」という傾向が強くなったという.

植物で言うと,こうなるか…
甲)枝葉を剪定して栄養が分散しないよう手をかけてやれば1本の幹が綺麗に伸びる.人工的な美.
乙)剪定する時間もなく勢いよく成長するが多数分岐した幹の多くは途中で折れて樹形はガタガタで美しくない.荒々しい.

理科大生は,甲)に該当する傾向に.
東大などでは,乙)に該当する傾向に.

世間は,東大生などは,何でもスマートに,最初から成功しているかのような錯覚を抱かせていますが,本人のなかでは,数多くの「思考実験」などで,何度も挫折などを味わっている可能性は高いです.
そのような人知れずの努力(妄想)が表に出てこないため,最初から,素晴らしい成果を出している,スマートな人間だという印象につながる.
数多くの思考実験などにより,色々な方向性を探りつつ,やがて1つの幹へと集約する.これが結果的な成功,なのかもしれない.

昨今の理科大生が「使える人材」と評されるということは,逆に「雇用される側」の意識が強いということでもあるかと思います.
大学教員も雇用される側ですけど.

つまり「成功したいので教えて」は,もう前提がおかしい.
成功者は,荒々しく色々と検証して,その努力のなかで運を掴み,それで成功している.
運がつかめる行動範囲の広さがないと,もはや成功は無理なのですね.
教えられた範囲しか模索しない程度では,成功などは難しいのでは?と感じる次第です.

このあたりを,理科大生にぶつけていきたいけど,いやはや,どうでしょうか?
ぶつけられるほうも困るかもしれません.

大学を出たら,どうなるか?
特に,修士を出ると,大変な事実が待ち受けているのです.
同僚に,東大などの出身者がいる,かもしれない.
遠藤は慣れているのですが,そうとうな切れ者が多いのは事実です.たまに恐怖を感じる程度には.
自発的に成長を繰り返し,ある意味で,成長しない同業の他者への理解に乏しい.なぜできないのか?と.

横にいる理科大出身者にも,どんどんと彼らの価値観で迫る可能性は高いわけです.
これが恐怖ですね.

だから,しっかり認識をして欲しいとは思います…理科大生のほうに.
卒業後は,理科大のスケールで競合するわけではない.枝葉を剪定して栄養が集中するように育ててくれる環境は,なくなります.
剪定を受けなくても,あらゆる方向に勢いよく勝手に成長する連中を前に,教えてもらわないと成長できない,これでは勝負にならないのです.

「雇用される側」としては問題行動に思える東大生などの成長は,競合する側には,なかなか厄介です.
それは,彼らの攻撃力が手加減していても強いからです…

以上の内容は,あくまでも「分布」の問題です.
東大生にも,自発的に育たない人もいるだろうし,理科大生にも,自発的に育つ人はいる.
「育てて欲しい」という感覚では,大学院以上では通用しない,これは事実でしょう.

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