倫理観

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ようやく時間が取れたため,GC-MSのメンテナンスを…したのですが,ヘリウム切れ.ほぼ使い切ったため,しょうもないから1月ほど眠ってもらうことになります.

学生の使用頻度は低いようだから問題はない.個人的には,使い勝手がよく重宝していますので,復旧しないと困ります.

 

理由はわかりませんが,低温時に溶媒ではない何かが山のように検出され,目的となるピークは高温時に何も検出されないという状況に陥っていたため,セプタムを交換してみたり,イオン源を洗浄してみたり.原因はイオン源,かもしれません.ESI-TOF-MSでも同様でしたね.

洗浄して煤を落とし銀色を取り戻したイオン源の部品は,ベーキングにより,また微妙な色に変色.一応,その後の立ち上げにより化合物のピークが検出.

ただ…何となく様子が微妙.

今回の不調の直前から,オートインジェクタは,バッチ処理開始しても自動的には動かなくなり「スタートボタン」を押さねばならないし.以前はバッチ処理開始で自動的にインジェクションまで進んでいました.何が問題かわからない.わからないのでサポートセンターにでも聞くしかないか.

 

論文審査も片付け,12日に今年度最後と思しき学務が終わり.細かいものは数えるときりがない.

来年度に備えて準備をして,うまくスタート切れるよう頑張りたい.

 

さて,自分の論文のほうは,ミスがないかと 毎度のごとく隅から隅まで確認作業するわけです.それでもミスが残り,誰にも指摘されないままゲラ刷りの段階で,こっそり気づいたりするものです.大半が,些細なミスですが…

STAP細胞論文等には,常軌を逸したレベルでのミス?が,うんざりするほど見つかった,ということですが,指摘されている点は,良識的な博士課程の学生なら見逃す訳のないレベルだし,コピペ騒動が事実であれば,むしろコピペが明るみに出る訳もないという判断が恐ろしい.これはまさしく夢ではないか?…悪い意味で.

ただ,引用先さえ明記されていれば「一般的な解説」に関してはコピペしても…と思いましたが,そういう場合は自分の言葉で引用先が述べていることを要約して,「あとは引用先を見てね」と書くことが通常か.もし,それが一般常識なのだという「引用」に関する教育がされていないなら,これは早稲田の問題となってしまうな.

 

この手の問題は学生時代に培われるものだと言われています.研究者として自立した後に倫理的なところで問題が出る場合,学生の頃に同じようなことを小さなスケールで繰り返していたことが多いそうです.

だから,正直バカな話だなとは思うのですけど「嘘はついてはいけない」「データは改ざんしてはいけない」「粉飾してはいけない」「見栄を張ってはならない」「剽窃してはならない」といったことを教えなければならない,という前提にある.周囲への多大な迷惑と同時に,自分が最も損をするからです.

捏造は,これらとは少し趣が異なりますね.仮に結論が真実だとしても,上述5点が出ると信じてもらえない.捏造は,すなわち,信じるも信じないもない.STAP細胞については,今のところ「捏造」とまで言いきるものではないかと思います.

 

STAP細胞論文の騒動は,領域は異なるし他人事なので当人を批判するつもりもないけど,あの些末な内容となると,問題学生の成せる業ですね.実際に,稀にいます,こういった実験レポートを書いてしまうケースが.通常は,実験レポートの段階で対処されます.

ある程度の自主性は芽生えたが善し悪しの分別がついていない,もしくは確信犯か.つまり,騒動の渦中の人間が確かに実働したことで起きている問題ですが,それを形成してしまった周囲の人間の責任は重い,ということになってしまう.

何かと暴走しがちな学生を教育指導して,先導するべき立場の人間が,教育を失敗しました,というケース.本人の問題だ!…とバッシングするのは容易ですけど,どちらかというと,教育過程において,受け身的には「真摯に事実に向き合う」という姿勢を叩き込まれることがなかった,能動的には,そういった姿に徹する先導者の姿に感銘を受ける機会がなかった,これに尽きます.

学生の不祥事が学内限定であれば,その段階で処罰することで問題は拡散しませんが,世界規模となると,未然に防げなかった点で,周囲の人間の責任問題にはなるでしょう.

 

以前から述べていますが,若手研究者は,20〜30年前とは大きく異なり「短い任期(下手すると3年)」で「次は保証されない」けど「高いインパクト」の研究成果を上げることが要求されるわりに「薄給」という,功を急がざるを得ない環境に投げ込まれています.その結果として,教授のお下がり研究は数知れず,独自研究で評価される若手は少ないのです.既に存在する価値観を継承して研究した方が,先駆者が築き上げた情報を吸収できるし,研究の信頼性も高いので,ならば独自性など後回し,という流れにもなりかねません.

何よりも,独自性を築き上げようとすると,3年などでは無理です.現在の研究者が置かれている環境は,独自性を潰しています.

この状況で追いつめられると,もしかしたら「若手による捏造」が出てしまう危険性があります.

 

STAP細胞が捏造ではない場合,せめてもの救いで,致命的なことになる前の段階で済んで良かった,とも言える.要するに,見栄えをよくしようと試みただけ, で済むならば.

いやしかし,コピペで見栄えは良くなるはずもなく,慎重さが欠如している…端的に言えば「渾身の一撃を食らえ!」という旗揚げを自ら唾棄したようなもの.自分自身が哀れだとは思わないのだろうか,それが最大の謎であった.

 

そういえば,遠藤が学生の頃,倫理的な教育は大学では「講義」という形で存在しませんでした.それは実験レポートとか,研究室で叩き込まれるべきものだったかと.今は違うのかな,たまにカリキュラムで見かけていた気がします.

これは日本の教育界にも波紋を投げ掛ける事案ではないでしょうか.

 

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