有機の束縛
大丈夫かNature?
著者らは既に以前,まったく同じ反応を「オマケ」として掲載していました.そのため,今更なにをしているのだろうという感覚です.合成論文としても,それほど目を引くわけではないしなぁ…
これは最大級にわからない.これで通るなら,我々が最初のジボリルアルカン論文で天然物骨格でも幾つか合成していればNatureか?…いやいや,それはないだろう.
有機化学はわからないな,我ながら.有機化学やってる人間の発言ではない?
http://www.nature.com/nature/journal/v505/n7483/full/nature12781.html
合成有機化学は,際限がないような感覚はしています.細々と骨格を変えて反応に投じれば,その都度,何らかの条件を詰める必要があり,それは抜本的な発想の転換というわけでもない.だから,延々とマイナーチェンジが続いているけど,最近の合成(反応)有機化学は,それらを自画自賛してしまい,同じところをグルグル回って抜け出せない.
不活性なものを用いる,という点を突破すれば,それがインパクト大となる.新しいギミックを明らかにすることで,次の発展に向かう.その意義は理解しているつもりですが,要するに大半は「別ルートができた」ということでもある.実用的には役に立たないコストであっても,それは将来のための投資という話で済むわけです.
自分自身も取り組んでいるのは確かで,有機化学としては良いのだろうなとも感じます.需要があることに間違いはありませんし.
ただ,サイエンス,といったあたりで議論されると弱い.
とにかく分子を作る,制御する,有機化学は取り扱いが面倒なものに挑戦しているため,その理解が深まり発展するには,まだまだ時間がかかるのだろうなぁ…
ちょうど今,にぎわっている生物に,高校の頃までの遠藤は興味があったのですが,既に存在する生物から力を引き出す,それは人間の意図するところというより,生物の意図するところ,とか考えて,より自由度の高い有機化学に進んだのであった.
進んでみると,有機化学には,もっと暗い縛りが根付いていますが.これを突破したいですねー.