内部量子効率と外部量子効率
定義は既に明瞭なので問題ないです…多分。量子収率なの量子効率なの?という疑問はありながらも、とりあえず厳密に使い分けはされていない気配です。本来は厳密に使い分けされるべきものにも思えます。
さて重大な問題があります。どうせたいしたことないだろうと思った人、確かにそうかもしれないので否定はできませんが、どう考えても違和感しかないので。
OLEDなどデバイスではなくて、化合物の蛍光に関する論文を読むと、かなりの確率で単に「quantum yield(QY)」とだけ書かれている。蛍光のQYなのでPLQYか。でもこれ、内部なのか外部なのかで話が全く変わってくる。
蛍光に関して語っている論文なのに、QYが全く測定されていない論文も散見される。どういうことか。
external quantum yield(efficiency):EQYでは、装置が放出した光全部に対して、励起された試料が放出した光がどれくらいか、という話。
internal quantum yield(efficiency):IQYでは、装置が放出した光ではなくて、試料が吸収した光に対して、試料が放出した光がどれくらいか、という話。
つまり試料の光の吸収量が、装置が放出した光100のうち5で、試料が放出した光が3だったりすると、適当な話であれですが、EQYは0.03で、IQYは0.6になります。雑な例えで申し訳ないですが。
…つまりIQYだと、まずまず光ってるように感じるわけですが、EQYだと弱々しいという印象になる。
なおデバイスにすると、内部か外部かは抜本的に意義が異なるのはわかり、つまり大半はEQEの数値で議論されている。化合物のケースはquantum yieldの方が良いのかな…
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何が気になっているかというと、例えば論文の本文にもSupporting Informationなどにも、外部と内部の区別を何も書いていないケースです。
次のように書かれていたりしますね…
「Absolute fluorescence quantum yield was measured by a calibrated integrating sphere.」
「Absolute fluorescence quantum yields were measured by photon-counting method using an integration sphere.」
はい、測定方法はわかります。でも、内部なのか外部なのか、何も書かれていない。探しても探しても出てこない。無論、論文によっては、しっかり書かれているとは思うのですが。
もしかして、外部か内部か、どちらかが「常識」として論文には記載されていないのかもしれない…そう考えた時、全般的には「内部」っぽいのですよね。
どれくらい光っているか写真が掲載されているので、ああ光ってるな〜とわかりますが、UVランプでUV照射して写真でそれなりに強く光っているように見えてもEQY(外部)の方は0.01だったりするんですよ、我々のサンプルでは。
この0.01という数値から想起されるのは「貧弱な発光なんだろう」ですが、実物を見ると「けっこう光ってるなぁ」なのです、印象として。
つまり論文に掲載されている写真だけだと、外部なのか内部なのかは判断できない。しかし、論文とSIのどこにもEQYなのかIQYなのか注記されていない。そして「こんな化合物なのに、こんなに光るしQYも高いのか」と、少々、誤認してしまうのです。
そんな高い数値を叩き出している化合物の蛍光スペクトルを見ると、なんというか曲線がガタガタしている場合も見かけます。印象としては放出する光の強度が弱くて検出しづらいのでは?…と、写真とQYとは真逆の感覚に陥るのです。
EQY = 0.01でも、UVランプでUV照射するとけっこう強く光って見えます。そして蛍光スペクトルも、しっかり出ます。それなのに、ガタガタした曲線の蛍光スペクトル(かつintensityを消し忘れているデータで、intensityの数値がかなり小さいと曲線が妙にデコボコしている)を掲載してある化合物のQYが0.5を越えていたりする。
外部と内部の数値の違いからわかることもあり、けっこう重要な判断基準になるような気がしています。それなのに外部か内部か、どちらか一方のデータは無視している論文が多いということになる。
常識なので、片方だけ書いておけば良いと…?いや、我々は両方とも論文に書きますけど…審査の過程で何か言われるのだろうか。
OLEDと化合物単体のQYを測定しているケースだと、OLEDの方をexternal QEと書いており、化合物の方は何も書いていないQY…となっていることもある。どちらにしても、化合物の方が外部か内部か、まったくわからないが…
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本件については、そもそもQY測定についてアドバイスをいただいた際に「論文の量子収率データのほとんどが当てにならないので」と言われ、ただそれは厳密な数値は、という意味だとは。
しかし論文を見ていると大御所の論文でも外部なのか内部なのか何も書かれてないし、その違いを見ようともしないし、議論も何もない…という、想定外の状況で困っているだけです。
装置で測定すると、普通に数値が出てきますね、外部と内部。その両方を論文に書いていない理由は何なのか。門外漢からのスタートなので難しさを感じますね。