遠隔講義の結果と考察

前期については2年生の必修である有機化学2を担当しています.

結果,わかったこととしては…

(1)どうしても課題を出さざるを得ない

対面講義では板書しているだろうということで,必然的に「一度は書いている」ということが明確です.
しかし遠隔講義では「一度も書いていないかもしれない」となります.

よって,毎回ではなくても,2回に1回くらいは課題を出して,実際に考えさせる時間を設ける必要があります.
そのため課題の回避はできないなと感じました.

(2)肝心の講義は遠隔で十分なのか

そもそも,例年,対面講義でなければ絶対に成立しないわけではないと感じます.
というのも,例年,質問にやってくる学生は,全体の5%〜10%程度なのです.
それはメールであっても良い.

その他90%はどうかというと,対面講義であろうが質問しない.

結局,その程度のものなのです.

それでも問題があるかというと,結果的に力が備わっていれば良いことになります.

なぜ対面でなければならないか,これは「習熟度」と関係ないところで議論することになります.

第一,大学とは「学生が自発的に勉強する場」であり「講義はガイドラインを示しているだけ」で「教員はなんでも質問に対応するため」に存在している.

有機化学では,化合物を取り扱う点では「ものに触れる」ためには対面でしか無理です.

(3)試験はどうするか

遠隔で試験を実施することになります.
よって,その試験時間中に,教科書を見ても,ネットで調べても,教員側は知るよしもないということです.
そのため「全部持ち込み可能」を前提として設題することになります.

確かに「将来,細かいことは教科書でも見れば良い」のですが,若干の不安は残ります.
また,複数人で相談しながら試験問題を解いている可能性はあります.

(4)試験の結果はどうだったか

・思ったより差が出ている
つまり「調べ放題」の状況にも関わらず,習熟度が高い学生から低い学生まで,わりと分散していた印象です.
もしかすると「頑張って調べるのも面倒」といった学生の習熟度が低いように感じるのかもしれません.
前提として勉強していれば,調べなくても解答できるわけです.

・まったく同じに見える答案もあった
ありましたが,複数人の答案が,解いている設問も含めて完全合致しているようなものはなかったような…
これはわかりませんが,残念ですが有機化学では「説明」を要求しています.
その説明が疎かなものが多く,仮に「コピー」していたとしても,点数は高くはありません.

解答者の説明内容を見て,説明内容が不十分なものは減点をしています.
そして,減点される人は,かなり多いという状況です.

しかし学生側で考えると,よくコピーする気になりますね他人のものを.
間違いまでコピーしているので.少なくとも,ほぼ同じ構造式や図を書いていることはわかります.
なぜ他人の答案が「あっている」前提なのでしょうか.

このあたりは自分の能力が下がるだけなので,好きにやれば良いでしょう.
自分をないがしろにしたければ.

(5)途中で放棄した人はどれくらいいたか

「昨年度までの対面講義」においては「試験に現れない学生」が1割いました.
今回は5%程度…遠隔講義だからといって増えたわけではありません.

結論として「遠隔講義は準備が酷く大変だった」のですが,学生側の習熟度が落ちたとかそういう印象はありません.
そもそも「自発的に孤独に勉強するのが大学」なのです.

遠藤も大学生の頃に「講義さっぱりわからん」というものは,講義に出ないで図書館で勉強していました.
結果,何が起きたかというと…
「対面講義に出席していたもの」は評価がたいして伸びず「図書館で自力で努力したもの」は評価が高かった.

20年前の話ですが,出席なんて反映されてませんでした.
あくまでも習熟度です.
自力で勉強したものが高く評価されるのは当たり前だと感じました.

それははからずも遠隔講義において再度明らかになったかと思います.