16. C-C Bond Formation and Cleavage Sequence

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“Chemoselective Carbozincation of Cyclopropene for C–C Bond Formation and Cleavage in Single Operation”

Endo, K.*; Nakano, T.; Fujinami, S.; Ukaji, Y.

Eur. J. Org. Chem. 2013Early View.

金沢での試み第1弾.ただし,この反応自体は,10年前に進行することがわかってはいた.反応機構が,よくわからなかったので,発見以降,他のことに手を伸ばして忘却の彼方.そういった何が起きたか不明ネタは,なかなか多い.しかし,他の誰かが大半を論文として報告している.仕上げるなら,やはり,早めに片付けねばならないが,時間に余裕もない.当時は「過去に例はないけど,なんだか収率が50%以下でイマイチ」だから「とりあえず,中心に取り組んでいるものを優先しよう」と意識が傾き「なかなか成果にならないなぁ」とか考えていたものである.当時の自分を殴って目を覚まさせてやりたいものだ.そういうネタが,研究室の誰にも報告していないものを含めて,遠藤の学生間の検討により7個ほど生まれ,そのうち5個は近年,他の研究グループによって報告されている.当時はまさに「7不思議」と化しており,どうにも何が起きているかよくわからず,改善策もぱっと出てこなかった.今回の報告は,7不思議のなかで最初に見つかった関連成果となる.

 

既に見つかってはいたが,特に意識することなく新しい戦略を立てたところ,過去の記憶につながったという結果である.それが以下の通り,最初はレトロカルボメタル化で何かできないか考えていた.

 

反応制御の多くは,段階的に安定な生成物を与えることを駆動力としているが,出発原料,中間体,生成物のいずれも似通った反応性を示す場合,選択的に目的物を得ることは難しい.我々は,有機金属中間体を経由するC-C結合の切断に注目した.C-C結合の切断形式は,(1)遷移金属原子による酸化的切断,(2)強い電子求引性置換基による双性イオン中間体の生成,(3)レトロ反応による切断が基本であり,他の形式は稀である.このレトロ反応のなかで,末端オレフィンを有するアルケニル金属中間体に注目した.たとえば有機リチウム試薬の場合,分子内で環化が進行してシクロアルキルリチウム中間体を与えることが知られている.このレトロカルボメタル化反応が進行すればC-C結合切断と同時に,アルキル金属部位と末端オレフィン部位を有する中間体が生じる.シクロプロピル金属に,この発想を適用すると,レトロカルボメタル化により,アリル金属が発生することになる.

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この戦略には,いくつかの問題がある.

(1)シクロプロピル金属中間体は,想像以上に安定性が高く,遷移金属触媒存在下のクロスカップリング反応にも利用されている.すなわち,それほど容易にC-C結合が切断可能というわけではない.

(2)仮にC-C結合切断が進行して生じるアリル金属中間体は,原料であるシクロプロピル金属中間体よりも反応性が高い可能性がある.

(3)シクロプロピル金属中間体の生成に,シクロプロペンのカルボメタル化が利用されるが,その結果,C-C結合が切断され,アリル金属中間体が生成したという報告例が極めて稀である.

(4)極めて稀な,シクロプロピル金属中間体のC-C結合切断例は,生じるアリル金属中間体が,シクロプロペンと反応してしまうため,複雑な生成物を与える.反応制御に成功したものが1つしかないが,骨格が特殊すぎるため汎用性がない.

 

結局は,以下の図のように,グルグルと様々なカルボアニオンを与えて複雑化する可能性が高い,というのが最初の感覚だった.過去の例では,やはり色々と生成物が得られてしまうことが明らかだった.

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我々は,この戦略達成のために,シクロプロペノンアセタール(CPA)を用いることにした.カルボメタル化後に分子内レトロカルボメタル化が進行することで生じうる,アリル亜鉛中間体の亜鉛原子に対するアセタール部位の配位が鍵と考えられる.

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適切な基質の設計の結果,βジカルボニル化合物を用いると,亜鉛エナミドのシクロプロペンへの付加と,ジエチル亜鉛のシクロプロペンへの付加,その化学選択性が発現することを見出した.ケトンまたはイミンと,ケトン,エステルまたはアミドの組み合わせを用いたとき,いずれも亜鉛エナミドの付加が進行したが,唯一,ヒドラゾン-アミドの組み合わせにおいて,ジエチル亜鉛のシクロプロペンへの付加,C-C結合の切断とアリル亜鉛の発生,ヒドラゾンのアリル化,逆マンニッヒ型反応が進行することがわかった.特にシクロヘキサン骨格を有する場合に反応は円滑に進行し,単一のジアステレオマーを与える.立体選択性は,X線結晶構造解析により決定した.

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以上のように,シクロプロペンのカルボメタル化,C-C結合の切断,アリル金属中間体の付加反応を制御することに成功した.新しいタンデム反応として,今後も開発に取り組む予定である.

 

今更ながらの妄想だが,7不思議をすべて学生の間に処理していれば,遠藤は,かなり有名人になれたのかもしれない.そんなことになっていないので,現状に落ち着いているわけだが.

既報の5個の戦略から,なかなかの有名人が誕生している,というのは事実なので,逃した魚は大きいという気もするし,彼らはそもそも有名人の兆候が出ていたので,関係ないのかもしれない.

当時の遠藤は,嗅覚が鈍い点を含めて駄目だったので,仕方ない話だな,ということで,今後は後悔しないように意識的にやっていきたい.

 

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