雑誌の難易度

KC4D0010

こっそりEarly Viewに掲載されていた…TOCの図がけっこう小さい.

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/chem.201403446/abstract

この論文は,徹底的に基質や求核剤のスクリーニングをしていれば,上位雑誌に掲載されたかもしれません.審査員による評価自体は,けっこう良かった.いつもボロクソに言われることが多いので珍しい.しかし今回は勢いで押せるような内容ではありませんでしたね.学生が卒業してしまうので,もうどうしようもなかろうと,急いでいました.

Chem. Eur. Jのimpact factorは5.8程度です.Org. Lett.(impact factorが6.1くらい)ならacceptするよう掛け合ってやる,というようなことをJACS審査で言われたのですが,Org. Lett.のページ制限のほうがきつくて,さっぱり収まりきりませんでした.Chem. Eur. J.のほうは全部で15000文字という制限であった気がします.ページ制限ではありません.

そういう理由が雑誌選択の背景にあります.マルチメタルはWileyでお世話になっているから,そのつながりで,ということも考えてはいました.

 

雑誌については難しい判断もあります.

学生時代に,有名研究室に在籍していると,たとえばJACS連発しているような環境では「Org. Lett.は最低基準」という発想になりやすいものです.そもそも実験報告会でプロポーザルすると「それJACSに通ると思ってるの?」という天の声が聞こえてくるのですが…判断基準はJACSというのも,今,考えると大変である…

 

ところがアカデミックキャリアに突入し始めると,独自性を示しつつOrg. Lett.に掲載されることが簡単ではないことに気づかされます.それだけではなくて,たとえばimpact factorが1〜3くらいの雑誌でも,論文掲載にはけっこうな努力を必要とし,「他人の仕事とは明らかに違う」独自性を含ませるのは大変です.

逆を言えば,誰が検討しても同じ結果になりそうな,他者の研究にインスパイアされた論文のほうが,論文としての掲載のハードルは低いです.著者らの特徴がない論文が平然と出ていると,空しいものです.

独自性を盛り込もうという努力が追加されることで,研究は難しくなるのです.なんでも良いから面白いものやろう,というなら話は変わります.

 

インパクトファクター重視というのは結局,研究費の獲得の問題につながっています.

ランキングの高い大学は,所属教員に対して, 高いインパクトファクターを求めます.その結果として研究費獲得にもつながります.

しかし,大学は単に「すぐ目先1〜2年」しか見ないので,長期的な研究展開など考えていないでしょう.持続可能社会と言っていたりするのは,具体的何か形があるわけではありませんし…そのため個人が本心から目指している研究内容は実際は多くはなく,大学が「インパクトがあると認められそうな研究に身を投じて研究費を獲得すべし」と,暗に煽動しているとも言えます.結果的に,究極的な目標にたおりつくかどうかは,現行の価値観での高い評価,とは関係ありません.

これが問題を引き起こしていることは間違いありません.自分を見失う人も少なくはない.

研究費なければ実験できないし,学生教育の面でも良いことがないので,今のところ明確な解決策はないような気もするなぁ…あとは個人の意識の持ちようかと思います.

 

 

さて,あと少しで,X線単結晶構造解析装置の入札がかかります.最近のマシンでは,肉眼では反射があるかどうかサッパリわからない「点」のような結晶でも測定可能ということで,楽しみです.

極小でも結晶になっていれば,の話ですが. 簡単に測定できそうなもので馴染みつつ,よくわからないものはX線を当てて様子を見る,という方法で色々と試してみることにします.

 

ヘキサンにも溶解するようなユニットは合成できましたが,こいつがうまく並ぶかどうか.前駆体で並んで,金属を入れても並べば,とりあえず論文になるのですがねぇ…自分の常識では,うまく並んでくれそうな感覚なのですが…まぁ実際は,もう少し盛り込んだものが溶ければ良いのです,溶ければ.溶けないからなぁ.

装置の納品は早くて9月頃.領域会議に間に合うかよくわからないあたりなので,ちょっとゴリ押しで実験を進めてみようかと思いつつ,まず扱いやすいものを合成しよう.扱いで随分と苦労しているのでいい加減にしたいものです.

 

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